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「中島・・海・・ ちゃん・・ ?」
「そうだ。ここ数年、道明寺司の傍にずっといたが司がNYに戻ってすぐに別れを切りだされ日本に
戻されそうになったのを道明寺楓が接触を図った。」
カイルが忌々しげにキャビネットの引き出しから数枚の写真を出して放り投げた。
「これ・・海ちゃん・・?」
私の記憶にある海ちゃんとはまるで別人だ。
短過ぎるくらいのショートヘアは赤くカラーリングされて、可愛らしい顔はこれでもかというくらい濃いメイクがほどこされている。
スーパーモデルを真似たんだろうけどしょせん猿まね。
服装だって人目で有名ブランドってわかるものだけど、海ちゃんに似合ってない。
「小金に目がくらんで、つくしと接触するように命令されたんだ。取り上げた持ち物から小型の拳銃があった。」
「何で・・何で・・海ちゃんがそこまで・・?」
そこまで悪い子っていうイメージじゃなかった。
天然で自分の欲に忠実だったけど悪気なんてこれっぽっちもない感じで。
「分不相応な思いをすると変わるんだよ。分かるだろう?」
カイルの言葉にはっとする。
たしかにと思う。私もそうだけど、司にしろ、類君、にっしー、あきら君にしろ、みんな彼ら自身を観ないで
私たちのバックグラウンドに魅かれてミツバチみたいにたかってくるんだ。
だから、私達は同じような立場の人間としかつるめない。
だけどつくしは違った。大河原だとか道明寺に関係なく私たち自身を見てくれた。
対等の立場でつきあってくれた。だから司も類君もすごく大切にしていたんだ。
「金は人を狂わせる。」
「そうかも知れない・・」
「中島海は司の傍にいて富と金に溺れたんだ。そして病院でのことも白状した。」
(海がつくしちゃんを突き落としたんだ!!司君を盗られたくなくて、いなくなっちゃえばいいって思ったの。)
「だけど、つくしは司だと思っている。」
「何で!?」
「あの事故の現場でつくしが必死でもがいている時、司が来たらしい。本当に偶然だった。
中島海は瀕死のつくしに聞こえるように酷い言葉を吐いた。
そしてつくしは大きな勘違いをしてしまった。」
「まさか・・・」
道明寺が、私を突き落とした・・海ちゃんと笑ってた・・溝鼠だって・・
辛かった・・痛かった・・だけど、私の存在が道明寺にあそこまでさせた・・
私さえいなかったら・・
「脅えて泣き叫ぶつくしに主治医の博士が聞き出したんだ。そしてつくしが思いこんでいた
真実を類がつくしに問い詰めようとしてつくしの心は追い詰められた。
まるでタカが外れたようだったよ。」
赤札、F4 学園中が敵 。
怖い、恐ろしい、追いかけてくる。
自分だけじゃどうしようも出来ないことを思い知らされたの。
友達になったけど、いつも自分だけはどこか違う空間にいた。
好きだけど大好きだけど、牧野つくしと言う存在はこの世にいちゃいけないって思われてるんだ。
「その晩つくしは熱を出した。まだ完治していなかった傷から感染症を併発した。
発見も早く手当ても早かったから大事にはいたらなかったものの、次の日に目覚めたつくしには
記憶がすっぽりと抜け落ちていた。博士は言ったよ。思いの強さが色んなきっかけを経て
記憶喪失に追い込んだって。」
・・・ わたしは・・だれ・・ですか・・ ・・・・
「どうしてこんな一人の平凡な少女を追い詰めるんだろうね。」
つくしのこと聞いて駆けつけてきた父とMr花沢、美作、西門は涙ぐんでいたよ。
しばらくして父はつくしの幸せを第一に考えるといって、つくしを伯父の一人の養女にした。
道明寺には手を出させない。
忘れてしまったのなら、新しくやりなおせばいい。
牧野つくしじゃなくったっていい。
新しい名前と家族で、BW一族の娘として何不自由なく生きていけばいいと。
今度つくしに手を出したらBW一族の敵として制裁を加えてやると。
「だから道明寺がまた何かするなら、我々は全力で潰す。」
「だから・・あんな言い方したんだ。」
つくしの友人でいると言うことは道明寺と敵対することも有り得る。
「私はつくしの親友だもん。協力するよ 」
「上出来だ。」
「だから、早くつくしに逢わせてよ。」
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